庭や 六点の腹六分目

庭師六点(ろってん)の日記です

「まき」の木

ある日、林業に従事している(以下「樵」とします)友人から「支障木伐ったんだけど、要らない?」と電話がかかってきました。
別の、こちらは瀬戸の窯元の友人から灰を釉薬にするのに欲しいと、広葉樹、特にブナ科の木がいいと言われていて、樵の友人にも伐倒木が出たら声を掛けてくれるように頼んでいたのでした。
樹種を尋ねると「まき」の木だと言います。

「槙の木は要らんなあ。ところでそんなに山に槙が生えてるもんなの?」
「? え? いっぱいあるけど」
「?」

なんだか話が噛み合っていません。
そこではたと思いだしました。私自身が山間部で林業に従事していた頃、お世話になっていた地元の年配の方々はクヌギやアベマキなど、ブナ科の落葉広葉樹を「まき」の木と呼んでいたのでした。おそらくミズナラやコナラなども含まれるかと思います。
当時も「槙の木?」と不思議に思い、薪炭材として「薪の木」と書くのではないかと尋ねたことがありました。
答えはたった一言、「知らん」、でしたが。
造園業に戻って久しく、林業当時の「まき」の木のことなどすっかり忘れて「まき」と言ったら「槙」、イヌマキのことだとばかり思い込んで話が噛み合わなかったのでした。

「あ、『まき』の木ね、ありがとう、欲しい」

きっと樵の友人が私が訳のわからないことを言っているように思ったことでしょう。
日を改めて一度現地を案内してもらって、その上、半日裁断と出材を手伝ってもらいました。

ところで想像していたよりはるかに材が大きい。そして多い。
樵の友人に前もって大きいって言っただろうと言われて、大げさに言えばまたもや林業と造園業の樹木のスケール感覚の違いを感じました。
竹やヒノキもありましたが、アラカシとクヌギと、そしてアベマキじゃなかろうかと思われる木が大量にあります。軽トラに1車2車運べばいいだろうと思っていたのに、今現在飛び飛びに数日かけて5回軽トラで運んで、今まだ現地に運んだ分の数倍以上の「まき」の木が積み上げられています。
宝の山


だいたい2〜3メートルに伐って積み上げてある木を、扱いやすいように40センチを基準にきざみます。
「薪」の木


初日に手で運んでへろへろになって懲りたので、以降は一輪車を用意しました。
能率一輪車


積み込み。
積み込み


窯元の友人宅に運んで、そこの薪割り機を借りて薪を割ります。
初めて使う機械が楽しくて薄暗くなってもまだ割り続けましたが、そんなアホなことは大概にしとかなけらばならないでしょう。本来ならば。
楽しい薪割り機


ヨキで割るのも楽しいですが、機械はもっと楽しい。なにより楽です。調子に乗って随分な量を割りました。
薪


あと何車運べばいいのかなあ、と、軽く途方に暮れています。
そして窯元の友人が立ち込める生木の匂いをなんだか面白く表現していたのが思い出せずに、ちょっと歯痒く思っています。


六点(ろってん) 眸耄表漾覆燭ひらじゅん)
〒489-0977
愛知県瀬戸市坂上町506-1
TEL0561-87-4636


陶片タイル

雨で仕事が半日になってしまったので、帰って陶片を切っていました。
前回は織部釉の陶片で作りましたが、今回は黄瀬戸です。
黄瀬戸陶片タイル



六点(ろってん) 眸耄表漾覆燭ひらじゅん)

施肥

施肥、といっても庭木の話ではありません。
畑の作物の話です。

去年の夏ごろから友人に畑を借りてぼちぼち野菜を育てています。

友人のお宅の畑は広い敷地を複数の方に分けて貸しているそうですが、耕作していない部分もかなりの面積あります。それまで知り合いの方に頼んで草刈りだけをしていたそうです。その部分を僕が貸してもらえることとなり、まずは草を刈り、残った根を掘り取ったのですが、貸してもらう部分の1/10ほどしか抜根できませんでした。
これまで刈った草はその場に放置して腐るに任せていたので、見た目にはたいそう肥沃な土壌に見えました。
最初の耕し


そこで、農作業の知識がないからという理由もありますが、秋頃、あえて肥料を施さずに大根の種を蒔き、葱を植えてみました。
九条葱と大根「耐病総太り」植え付け種蒔き


形(なり)は多少小さかったものの、どちらも大変美味しかった。
それに気を良くして今度は冬の終わりに玉葱を、春にジャガイモを植えました。
大根の余った種の一部は、摘み菜で食べようと思い、適当にバラバラ撒いておきました。

なかなか様子を見に行けずにいて、やっと4月の終わりごろ様子を見に行けた時にはまた草が生い茂り、大根菜はどこにあるのやらわからないような有り様、玉ねぎはひょろひょろした細い葉がそう伸びずにいたままでした。

6月の末にやっとゆっくり様子を見に来ました。
様子見のつもりだったのですが、玉ねぎは大きいもので6センチくらいのものが数個、残りは3〜4センチにしかなっていませんでしたので、丸ごと茹でてスープにしようとすべて収穫。
ジャガイモは半分ほど残して土を被せ直しておきました。こちらもやはり小さかった。

小ジャガ収穫


そしてどこにあるのか分からなくなってしまっていた。大根は、たくさんの種をつけていました。
大根菜種


玉葱もジャガイモも、これまた味は良かったのですが、数も少なく形も小さい。
何年も何年も刈られた草が腐って半ば自然の堆肥となっていたからこそ、しっかりと濃く旨い味の作物になったのでしょうが、肥料の効果はやはり大きいのだと感じました。
自分の家でただ味を楽しむだけであればこれからも無施肥で構わないのかもしれません。しかし、土を耕し草をむしって管理するということは、そこを裸地化することでもあるでしょう。
草が生えそれが枯れることを繰り返して肥えてきた土地が痩せてしまうことは案外早いのではないでしょうか。
おそらく、形だけでなく味も落ちていくことでしょう。
施肥の方法も肥料も、先人が長い年月をかけて培ってきた知恵であり技術です。
化学肥料の是非が問われることももちろんありますが、人の営みの大きさを感じずにはおれません。

大根の種は、妻が親しくしている畑に詳しい方に「大根として育てることはなかなか難しいので、蒔いて摘み菜で食べればよい、通年食べられるよ」、と教えていただいたのでそうしようと思います。


六点(ろってん) 眸耄表漾覆燭ひらじゅん)

庭や 六点【施工例】六点オリジナル立水栓(織部)

私は他県出身の瀬戸市在住です。
住んでいる場所とは少し離れていますが、瀬戸でも特に赤津という地区とご縁がありましたので、かねがねそちらの器の釉薬の色でなにか面白いことができないかと思っていました。自宅で実験的に陶片を貼った水周りのちょっとしたものを作ってきましたが、今年4月の終わりから当の赤津地区で仕事として施工させていただき、少しだけ縁が深まりました。
この赤津地区では、灰釉(かいゆう)・古瀬戸釉(こぜとゆう)・志野釉(しのゆう)・黄瀬戸釉(きぜとゆう)・鉄釉(てつゆう)・織部釉(おりべゆう)・御深井釉(おふけゆう)といった代表的な七種の釉薬を赤津七釉と呼んでいるとのことです。

今月上旬、オリジナルの立水栓の試作品が完成しました。
水栓柱の地上に出る部分が70センチのタイプで、緑が美しい赤津七釉に数えられる釉薬の一つ、織部を用いています。
道往く人に見てもらえるよう、うちの前に埋け込みました。
六点オリジナル立水栓(織部F700)001


六点オリジナル立水栓(織部F700)002


まずは陶片を用いて作ることが可能であるかを知りたかったので、一息つくことができました。
これでなんとか「オリジナル立水栓制作承ります」と言うにあたっての第一段階はクリアでしょうか。


六点(ろってん) 眸耄表漾覆燭ひらじゅん)

金環日食

太陽観察用グラスを通してコンパクトデジカメで撮影してみたところ、意外にうまく撮れました。

金環日蝕



六点(ろってん) 眸耄表漾覆燭ひらじゅん)

庭や 六点【施工例】愛知県瀬戸市:ガーデンシンク

4月から5月にかけて、地元愛知県瀬戸市の窯元さんに手洗い場を作らせていただきました。
瀬戸市の赤津という地区の窯元さんです。

窯元さんの陶片を再利用し、タイルのように貼りつけました。この窯元さんは陶芸体験の教室も行っておられるのと、直接買い求められるお客さんも多数お越しになるようなところなので、窯元さんの得意とする釉薬の色見本としてもお役に立てたら、という思いもありました。
ガーデンシンク


庭の流しで「ガーデンシンク」、タイルを用いれば「タイルシンク」などと呼ぶこともあるようですが、なんだか自分に似合わないようで面映ゆく感じます。ただ、「流し」や「手洗い場」だとちょっとニュアンスが伝わりにくいようで、口頭では「手洗い場」と「ガーデンシンク」の双方を使っていました。

水栓のハンドルは自然石です。
自然石ハンドル水栓


この仕事の流れで瀬戸の織部釉の立水栓も試作していますが、それはまた後ほど。


六点(ろってん) 眸耄表漾覆燭ひらじゅん)

はじめまして、庭師の六点(ろってん)です

平成23年(2011年)6月より庭師として独立しました。
仕事も含めたあれこれを綴っていこうと思います。


木鋏



六点(ろってん) 眸耄表漾覆燭ひらじゅん)
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ